巻頭言 PDFを表示PDF Download

グローカル人材育成のための留学生支援

青森中央学院大学 国際交流センター長

大泉 常長

 青森中央学院大学は平成30年度に開学20周年を迎えます。本学は大学開学時、当時の文部省から「留学生10万人計画」と絡めて、「100人程度の留学生を受け入れること」を要望され、この20年の間、コンスタントに優秀な留学生を受け入れ、地域に関わる様々な機会に留学生を送り出してきました。

 本学は平成16年より、あおもりくらしの総合研究所の協力の元、青森県の農林水産業や林業、伝統工芸に触れる研修や実体験を通して、本県の地場産業についての知識を蓄え、この地域を深く理解する「青森県サポーター育成事業」に取り組んでいます。参加した留学生の多くは、青森地域や東北地方に愛着を持った「(将来の)青森のセールスマン」に成長し、卒業後は青森を離れても、それぞれの場所・立場で本県との架け橋となってくれています。

 さらに平成19年からは、十和田市・あおもりくらしの総合研究所とともに進めてきた海外からの教育旅行生の誘致が実現しています。留学生たちはこのグリーン・ツーリズム事業において、語学力やこの地域に関する知識を活用し、海外から来青する旅行者をサポートする重要な役割を担っています。

 その他、様々な取り組みの中核となるのが、学内登録制の「国際語学サポーター」であり、青森県内での国際交流・地域貢献の促進ならびに留学生自身の成長・研鑽のため、派遣要請を受けた地域の学校・行政機関・国際交流団体における様々な場面に留学生を派遣しています。母国との架け橋の役割を担う留学生による本県への地域貢献への姿勢は、メディアによって大々的に取り上げられることで励みや自信に繋がり、次の新たなる挑戦の道へと導かれていきます。

 今年一月、新聞労連は平和・民主主義の確立などに貢献した記事を表彰する第22回新聞労連ジャーナリズム大賞の優秀賞に、国内で急増する外国人労働者との共生を地域から考える西日本新聞の長期企画「新移民時代-外国人労働者と共に生きる社会へ」を選出しました。同書は、日本政府が移民政策についての議論の展開に消極的な中、来日した多くの留学生が、低賃金で単純労働を担っている実態を報じています。現在日本政府が推進している「留学生30万人計画」は、2020年までに、受け入れる留学生を30万人まで増やす政策であり、その本来の目的は、大学等の教育・研究の国際競争力を向上させ、優れた能力を備えた留学生を継続的かつ戦略的に獲得することなどにあります。しかし、多くの留学生がアルバイトを最優先に本邦に滞在し、本来の目的であるはずの修学を怠れば、日本政府が期待を寄せるような結果は得られるはずもありません。現在の留学制度の根本を歪ませる恐れがある出稼ぎ目的の留学生排除のためには、学校間で経験や知恵を共有していく姿勢が大切です。その点からすると、近年、本学の留学生支援が地域に根差した「グローカル人材の育成事例」として、全国的にも注目されるようになったことは喜ばしい限りです。

 

あそさ表紙へもどる
 
あそさについて
adobe link PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、ダウンロードして、インストールしてください。