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弘前大学の国際化―多様性の深化を目指して

弘前大学長

佐藤 敬

 以前からの課題ではありますが、最近特に、大学の国際化の必要性が広く指摘されており、弘前大学においても、国際化は大学改革の柱の一つです。これは単なる一時的な世論の高まりによるものではなく、我が国と世界の未来を担う若者たちを育む過程で本質的に必要とされることだと理解しています。

 ある有名私立大学では、“学生全員の海外留学”をうたっていますが、残念ながら、弘前大学にはそれを積極的に推進する力がありません。掛け声だけで学生に留学を勧めたとしても、費用の問題はもちろんのこと、何処に留学して何を学ぶかなどを考えると、海外への留学生を飛躍的に増やすことは容易ではありません。辛うじて去年から、特別の英語教育とニュージーランド及びアジアの大学への海外留学をセットにした学内カレッジを始めました。定員は5人からスタートし、今年は1人だけ増えて6人にとどまっていますが、これを含めて、平成25年度の弘前大学の海外留学生の総数は111名です。幸いにして、学内カレッジの応募者は採用数を大きく上回っているのが喜ばしいことですが、一方で、もっと多くの学生が留学できればという無念さも感じています。外国からの留学生に関しても、弘前大学の現状は誇れるものではありません。平成26年5月には139名の留学生が在籍しており、東日本大震災後に減少して以来、少しずつ増えてはいますが、まだ震災前のレベルまで回復するに至っていません。留学生を迎えるにあたっても、さまざまな支援策等の整備が必要ですから、これも直ちに倍増などとはいきませんが、例え亀の歩みのごとくであっても、堅実に学生の国際交流の機会を増やしていきたいと願っています。

 これに関連して、今年度から、弘前市と弘前商工会議所や地域の企業等からご寄附をいただいて、学生が企業の方々などと一緒になって、海外研修の機会を持つための基金を設立できたことは、大変心強いことであり、感謝に堪えません。それに限らず、地域の方々にはさまざまな面で、弘前大学生や留学生に大きな支援をいただいてもいます。この地で教育研究活動に携わることのできるわれわれ教職員と、この地で学ぶことのできる学生は本当に恵まれていると思います。

 これらを通じて、弘前大学生には、多様な環境の中で多様な学びの機会を持ってもらうことが重要と考えています。多様性は大学が強めるべき特性の一つであり、国際化をその一環ととらえています。やがて社会に出て、さまざまな課題に取り組むべき弘前大学生の成長を願い、時代の流れに乗るのではなく、多様性をさらに深めていくことを旨として、今後も学生教育を大切にする大学でありたいと念じています。

 

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