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青森県の国際交流関連の取り組みについて
~平成26年度・在住外国人活用事例の紹介~

青森県観光国際戦略局 国際経済課長

小山 宏

1.はじめに

 本県では平成26年度から、「強みをとことん、課題をチャンスに」を基本コンセプトとした「青森県基本計画 未来を変える挑戦」をスタートさせました。また、人口減少等を背景とした国内市場の縮小に対応するため、経済成長が進んでいる海外市場への販路拡大を推進し、積極的に外貨を獲得するため、「青森県輸出拡大戦略」を策定したところです。

 このような中、県では、留学生など在住外国人が持つ知見を財産としてとらえ、平成25年度から2ヵ年で、県内企業の輸出拡大や海外からの誘客、そして地域の国際化促進を図るために「在住外国人活用拡大化推進事業」を実施しました。

 本事業は大きく二つに分けられ、一つは、県内の個別企業に在住外国人を派遣し、企業見学会やテストマーケティング、意見交換会を行う「県内企業と在住外国人の交流会(以下、交流会)」であり、もう一つは、在住外国人を県内各地の観光地などに派遣し取材をしてもらい、本県の魅力や安全・安心の情報をフェイスブックを通じ海外に発信する「体験型取材と海外情報発信(以下、体験型取材)」です。

 平成26年度の活動に参加した在住外国人は、各教育機関に在籍の留学生の他、JET(語学指導等を行う外国青年招致事業)の国際交流員や外国人指導助手等、14カ国述べ111名に上りました。

 ここでは、本年度全10回開催した交流会・体験型取材について、いくつかの取り組みを業種別にご紹介します。

2.在住外国人活用事例

(1)株式会社木村食品工業(食品加工・製造)              平川市
 平川市に本社を置く㈱木村食品工業では、6月の山菜収穫時期に合わせ交流会・体験型取材を実施し、地元で収穫された山菜の買い取り現場や山菜の加工、山菜料理の試食などが行われました。意見交換会では、担当者から、母国との山菜の料理方法の違いや地域住民との関わり、原発事故後の生産品への風評などについて説明がありました。
活動日平成26年6月7日(土)
参加者弘前大学留学生:中国12名、韓国2名、タイ1名
青森中央学院大学留学生:ベトナム3名、タイ2名、マレーシア1名
外国語指導助手:アメリカ1名            (計7カ国/22名)
活動の様子
  
参加者の声
  • 山菜と聞くと草の匂いがする感じですけど、全然違いました。高級料理になってもいいと思います。
  • 山菜料理を見て、体にいい、ヘルシーな食品だと思いました。
  • 山菜は新鮮で、自然の宝物だと思っています。
  • 自分には、濃い味と酸っぱい味はちょっと苦手です。食感と言えば、食べやすいと思います。
  • 日本の伝統的な漬け物の作り方を見学し、そして味わって食べることを通じて、日本食のおいしさを垣間見ました。とてもありがたい体験だと思います。
企業の声 山菜の味付け料理を食べてもらいましたが、 山菜が合わないと言うのもあり、また味付けがしょっぱいと言う部分が聞き取れることが出来ました。こういう部分は今後の商品開発に対して、改善の余地があることが分かりました。

(2)株式会社Pvex(機械・プログラム設計開発)         おいらせ町
 おいらせ町でLPG圧力容器の設計用ソフトウェア等を開発する㈱Pvexとの交流会は、世界的なエネルギー事情の高まりと青森県の持つエネルギーポテンシャルに関連した知識共有を図る目的から、六ヶ所村次世代エネルギーパーク内で開催しました。企業と参加者の間で、先進国、新興国、発展途上国のエネルギー事情についての活発な意見交換がなされました。
活動日平成26年7月12日(土)
参加者弘前大学留学生:中国4名、タイ2名、韓国1名、フィリピン1名
八戸高専留学生:マレーシア2名、タイ1名、ラオス1名
外国語指導助手:アメリカ2名、カナダ1名
㈱Pvex海外技術研修生:ミャンマー2名
青森県海外技術研修生:パラグアイ1名      (計10カ国/18名)
活動の様子
  
参加者の声
  • このプログラムは、私のようにエネルギーに興味のある参加者にとって、とても役に立つものであったと思います。そして、ラオスのような発展途上国にとって今後有用となる再生可能エネルギーに興味を持ちました。
  • この交流会は、私にとって直接経験する場であり、興味を持ちました。利用可能な異なる種類のエネルギーについて多くを学びました(それぞれのメリットとデメリットについてもです)。
  • 私は、日本と他の国々のエネルギーについてたくさんの知識を得ました。世界中の人と国の発展についてディスカッションをすることはすばらしいことだと思います。
企業の声 企業側が英語の使用にこだわった割には、なんとか理解が深まったと思います。エネルギー問題に詳しいカナダ人が口火を切ってくれ、続いて、タイの学生さんがフォローしてくれました。安全保障に係わるため、日本語でやっても、英語でやっても難しい問題(概念)ですが、今後、余り時間を置かずに、同じ取り組みを続けて行くことが肝要かと存じます。

(3)株式会社みどりや(宿泊・ホテル運営)               青森市
 青森市中心部でグリーンパークホテル等を経営する㈱みどりやでは、参加者は2名一組になって模擬的なチェックインをしてもらい、受け付けの対応、室内の使い勝手、外国語標記の分かりやすさ、そしてバイキング料理の味などの評価を行い、社長との意見交換会を行いました。その後、この活動に参加したタイ人留学生2名は、9月下旬にインターンシップをさせていただきました。
活動日平成26年8月23日(土)
参加者弘前大学留学生:中国5名、タイ2名、フィリピン1名
青森中央学院大学留学生:マレーシア3名、ベトナム1名
外国語指導助手:アメリカ2名
青森県海外技術研修員:パラグアイ 1名       (計7カ国/15名)
活動の様子
  
参加者の声
  • あたかも自分の家のような感じがします。明るくて清潔でいいと思います。
  • 笑顔,礼儀正しく,挨拶もよかったです。ただ,もしお客が見た目から外人であることが分かっているのであれば,簡単な英語で挨拶をするとよいです。簡単な英語での説明もよいです。
  • 丁寧で,とてもやさしいですが,部屋の案内をもっと具体的に言ったほうがいいと思います。
  • ホテルで模擬チェックインをして,客室に住んでいる気分で,また受付の対応が良かったです。手ごろな値段でのサービスやアメニティに満足です。
企業の声 以前から冬季間の宿泊数の伸び悩みが有り、ビジネスホテルとして克服しなければならない問題でしたが、今回海外のお客様の宿泊での対応や迎える側の問題点も見つかり今後改善して行き、雪の有る事をセールスポイントとして、東南アジアの方々に利用して頂く為のマニュアル作成に進みたいと思います。

(4)佐井定期観光株式会社(観光・サービス)              佐井村
 佐井村で仏ヶ浦を中心とした観光関連業務を行う佐井定期観光㈱では、参加者に企業が提供する観光サービスを体験してもらい、仏ヶ浦上陸後のガイド内容などについて意見交換を実施しました。参加者からは、これまで知らなかった下北の魅力を体験することができたとの声が聞かれました。
活動日平成26年9月6日(土)
参加者弘前大学留学生:中国2名、タイ1名、韓国1名、エジプト1名
青森中央学院大学留学生:ベトナム3名
外国語指導助手:アメリカ 3名
青森県海外技術研修員:パラグアイ 1名       (計7カ国/12名)
活動の様子
  
参加者の声
  • 美しい自然環境をもっている佐井村を体験できて,とても楽しかったです。より多くの人に佐井村のことを伝えたくなりました。とても良かったです。
  • 自然がいっぱいあるし,神秘的なところだと思いました。
  • ガイドの説明は聞きやすいですが,景色の名前や植物の名前が聞き取れませんでした。ビデオに出てきた景色や植物と共に,それらの名前や具体的な説明の字幕があれば,もっと分りやすくなると思います。
  • 上陸後は夢中になって,ガイドの説明は逆に聞こうとしないかもしれません。
企業の声 今後は雑誌やウエブサイトでの青森県、下北の魅力発信を行うとともに、人と人との繋がりによって生み出されるクロスメディア・フェイスブックなどを活用した情報発信が不可欠になります。今回来てくれた学生さんたちがその架け橋になってくれることを期待しておりますし、こういった事業をこれからも続けて欲しいと思います。

(5)北洋硝子株式会社(伝統ガラス工芸)               青森市
 津軽地方の伝統工芸品である津軽びいどろを製造する北洋硝子㈱では、参加者に工場見学をしてもらった上で、実際にタンブラー等の製作体験をしました。製作後の意見交換会では、津軽びいどろの形状の多様性、色使い、職人の技などについて話が挙がりました。
活動日平成26年11月29日(土)
参加者弘前大学留学生:中国5名、タイ1名
青森中央学院大学留学生:ベトナム1名
外国語指導助手:アメリカ 2名             (計4カ国/9名)
活動の様子
  
参加者の声
  • 伝統と現代さを結ぶというポイントと「和」という要素がすばらしいと思います。色の使い方(融合など)も優れていると思われます。
  • 日本の伝統工芸にはいつも感心しています。伝統を守りながらさらに発展させることや手作りのもののすばらしさについて、よく感動させていただいています。
  • 全部の製品が手作りであることがもっとも優れていると思います。匠人たちが工夫して汗を流しながら作ったものですので、一つ一つの製品は世界で唯一のもので、すごく珍しいと思います。
企業の声 私共も少々言語に戸惑いがありましたが、全くそのような事は無く普通に対応出来たので指導しやすかったです。笑い有り、感動有りで良かったと思います。

全10回開催された交流会・体験型取材の参加者累計
 外国人:14ヶ国、述べ111名
 (内訳)  
①国  別:
 
中国38名、タイ15名、アメリカ13名、マレーシア13名、ベトナム9名、韓国7名、パラグアイ5名、ラオス3名、ミャンマー2名、フィリピン2名、ドイツ1名、フランス1名、カナダ1名、エジプト1名
 
②職業等別:
 
留学生89名、JET15名(内、青森県国際交流員2名、外国語指導助手13名)、海外技術研修員等7名

3.まとめ

 青森県は、「世界とつながる青森」を念頭に、県内の企業・団体の海外展開や組織体制の国際化を推進してきました。留学生をはじめとした県内在住外国人の活用は、今後地域が直面する課題である、多文化共生のための基盤づくりとしてとらえることができます。

 また、外国人の皆さんが県内企業とその経営者や従業員との交流を持ち、製品やサービスについての知識を得て、さらに青森での思い出をつくることで、母国に帰国した後その魅力が拡散されることによる効果も見込まれるところです。

 地道な取り組みではありますが、このように育てられた「青森好き」「青森通」の外国人は、今後起こりうる国際経済の変革に対応していくための、本県にとって大切な人財になるものと考えています。

謝辞

 平成26年度在住外国人活用拡大化推進事業にご協力いただいた在住外国人の皆さんをはじめ、下記教育機関、企業・団体方々に深く御礼申し上げます。

弘前大学株式会社木村食品工業株式会社村口産業
青森中央学院大学丸富川崎染工場下風呂公民館
青森大学ブナコ株式会社北洋硝子株式会社
八戸工業高等専門学校株式会社Pvex大鰐温泉もやし栽培施設
株式会社みどりや株式会社ブルーモリス
野辺地町漁業協同組合星野リゾート青森屋
佐井定期観光株式会社株式会社たから
佐井村観光協会株式会社ファーストインターナショナル
株式会社エコブリッジ株式会社弘前ねぷた館
種差観光協会(順不同)

 

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