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留って学ぶ「留学」の意義

青森中央学院大学長

花田 勝美

 「留学」とはその文字通りそこに「留」まって「学」ぶことにあります。もちろん選択した専門分野の最先端を学ぶことは当然のことですが、留まらないと理解できないことも少なくないはずです。

  私はこの春、青森中央学院大学に赴任しました。コジンマリとした学園内に大学の各施設が密集していますが、いずれも特徴ある建物でまるで「おとぎの国」の国にいるような雰囲気がありとても気に入っています。特徴的なのは建物に限らず、留学生の比率が高いことにも驚かされました。現在ではアジアの6か国から110名ほどの学生が集い、勉学と大学生活をエンジョイしています。日本語の語学力には個人差があるようで、ゼミ担当教員のご苦労されるところです。私にできることは挨拶ぐらい、朝夕の挨拶に元気な日本語が返ってくることを期待しています。

 学園では留学生の活躍が目立ちます。新入生歓迎会の折に見せる民族舞踊や民族料理の味などはプロ並みです。母国語と日本語を話せる特性を生かし、アジアの各国から訪れる観光客に対して「グリーン・ツーリズム」の語学サポーターとして大いに活躍しています。この活動はマスコミでもしばしば報道されているごとくです。学園では昨年より、青森市新町の一角にサテライト・キャンパス(フレンドリー・ウィンドウ)を開設しています。フレンドリー・ウィンドウでは開かれた大学をアピールするために、多彩な行事が繰り広げられています。ここでも留学生による言語学の公開講座が定期的に開かれており、市民に接触する貴重な場となっています。

 近年、もうひとつ誇れる大学行事ができつつあります。それは、本学大学院「地域マネジメント研究科」が主催する「マンゴー販売」です。タイ国で栽培される高級なマンゴーを作付けの段階から関与し、輸送、検疫、販売までに携わってもらうというものです。このプロジェクトには外国人留学生だけでは人数も足りず、日本人学生、職員も手伝います。学生たちが賞味期限の短い南国の果物を自分たちで輸入する力を養えれば、将来は逆に青森県のリンゴを中心とした農産物を海外に輸出するという「マネジメント力」を持つことでしょう。グローバルとローカルをつなぐグローカル・ビジネスを教えることを主眼としている本学にはぴったりのプロジェクトです。せっかく留学の機会が得られたのですから、日本人学生とはもちろん、一般市民との交流を深め、これを大きな財産として持ち帰っていただきたい願っています。

 もうひとつ、留学生は、多くの職種の日本人に接し、まずは、日本人の風習を通して文化を学んでほしいと思います。昨今、アジア各国で歌われる日本の歌や結構親しまれている日本文学を理解するためは、昔から受け継がれてきた何気ない日本の習慣やことばに触れることが必要です。私たちもまた、彼らから新時代のアジアの若者の感覚を学ばなければなりません。誰が何と言おうと、これからはアジア経済の時代ですから。

 

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